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カテゴリ:日々のこと( 8 )

『#SCOPE』セルフライナーノーツ大公開の巻

2015年の11月22日にリリースしたnameshopのアンビエントアルバム”#SCOPE”が完売しました!本当にありがたいです。
このアルバムは僕がこれまでに環境音楽作家として作ってきた曲群の中でもかなり実験的で挑戦的な内容になっているのですが、とりわけ「普段ならひとりで作っているようなタイプの音楽を信頼するバンドの仲間たちと一緒に作ることができた」という点で思い出深いです。

リリース直後に書いたセルフライナーノーツがあります。ジブンが作った曲がどうして生まれたか、どのような仕組みで作られているのかといったことを僕は普段あまり説明しないようにしているのですが、これだけ色々盛り込んだアルバムですから、部分的に種明かしをしてみてもいいんじゃないか、アルバムを手に取るきっかけになるんじゃないかとおもって、「いつか」のために書いたそこそこボリューミーなライナーノーツです。アルバムが完売したいまがその「いつか」と判断して、いまここで公開してみることにしました。アルバムはApple MusicGoogle Play MusicLINE Musicなどで配信されていますので、ぜひ併せてお楽しみいただけたらと思います。何卒。

ではどうぞ!

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アルバムについて
nameshopでプラネタリウムを会場にしてワンマンライブをやろうという話が出たとき、ではどういうライブをするかと考えるにあたりメンバー間で出した「SCOPE」というワードをもとに、ライブで演出する物語の筋道としてベーシストの渡部かをりが小説版『SCOPE』をプロットとして書き始めました。『#SCOPE』はその小説と並行して制作されました。ライブのためではなく物語に寄り添うアンビエントミュージックとして、様々な手法で作曲しました。

1.moon(Sea of Fertility)
 アルバム中いちばん最初に作られた曲です。ライブ用に演奏をバックにVJなどの演出をメインを仕立てる目的で制作された歌モノです。この曲が心地よく仕上がったことが、このアンビエントアルバムの制作に挑戦するきっかけになりました。
 エレピが奏でる7拍子の伴奏に他の楽器や歌が自由な律動で乗っかる、というのがコンセプトになっています。
 傘木亮介(key)がシンセで鳴らしているスティールドラムの音が個人的にツボです。スティールドラムといえば南国系やエキゾ系の音として使用されがちだし、そうあるべきだともおもうのですが、ずっとアンビエントで使ってみたいとおもっていたので、傘木さんに音色だけ指定してテキトウに弾いてもらいました。ちょっとモノホンっぽい譜割を弾いているのがおもしろいですよね。
 それから、内田明宏(gt)の演奏もポイントが高いです。鍵盤と違って微分音を巧みに操れるので、僕がジブンひとりだけで作るアンビエントとは違う心地の良さを演出してくれています。
 大洋を揺蕩うような、宙を漂うような、そんなイメージが出来上がったきた所、丁度作りはじめられた渡部かをり(bs)の小説"SCOPE"に月が重要なモチーフとして登場してきたので、其侭に「月」という題と、月にいくつかある海の名前から「豊饒の海」を副題として起用しました。

2.Prometheus(the Bringer of Arma)
 小説"SCOPE"が制作されていく最中に書き手である渡部かをり自身から「プロメテウスを題材にした曲がほしい」という相談を受けて作った曲です。
 プロメテウスは天界から人間界に火を持ち込んだ神様といわれています。その所為で人間は争いごとを起こすようになってしまったのだ。・・・という話は後で調べて分かったことで、最初にプロメテウスという単語を聞いたときに僕が真先に思い出したのは、95年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたロールプレイングゲーム「クロノ・トリガー」に登場するキャラクターであるロボ(本名がプロメテウスなんですね)の存在と、彼のいる荒廃しきった未来の世界のことでした。白石少年は勝手に「終末」や「頽廃」といったことをテーマに楽曲の制作を進めてしまったのですが、これが後に小説の内容に影響を与えることになり面白かったです。
 nameshopとしても白石アンビエントとしても珍しいギターフューチャーモノになりました。ひたすら同じ13拍子のフレーズを弾き続ける柳澤澄人(gt&vox)、たいへんそうだったなぁ。間違えちゃってるのもそのまま収録してます。そこに内田明宏(gt)御得意のE-Bowを使用した息の長いフレーズと、それらに対しポリリズムになるように譜割を組んだ白石のシンセと澄人のアコギを重ね、曲の主軸が完成しました。
 メインパートになっている謎の音声は、渡部かをり(bs)が小説を朗読した音声を白石がヴォコーダーにかけリアルタイムに音程を当てたものです。この、声を出すひとと鍵盤を押さえるひとが別っていうヴォコーダーの演奏スタイルって見たことないなぁとおもって、面白がってやってます。
 副題に選んだArmaというラテン語には、「戦争」と「武器」の両方の意味があるそうです。題材にピッタリの単語が見付かり興奮したものでした。

3.Irene(the Bringer of Pax)
 白石のソロ曲です。得意のピアノアンビエントですね。こちらも渡部かをりから「平和の象徴をテーマにした曲がほしい」と依頼を受けて作りました。副題のPaxはラテン語で「平和」を意味します。
 平和、天体。このふたつのワードから白石少年は勝手に連想ゲームをはじめて曲のテーマを考えます。ゴールはすぐそこにありました。天体のなかから太陽系をテーマにして作られた有名な組曲がありますね。そのなかには「平和を齎すもの」という副題の付いた曲があります。この曲は、その曲の終盤の部分をピアノ2台で演奏できるように編曲したものを、引き伸ばしたり繰り返したりして作られたものが原形になっています。録音するのに最も集中力の要る曲でした。

4.EARTH(2059)
 こちらも白石ソロ曲です。アルバムを制作するにあたって、いろんな方法論(曲のコンセプトや仕組み作りのことです)で曲を作りたいよねという話をメンバー間でよくしました。この曲の仕組みや成り立ちについて語りたいことは沢山あるのですが、とりわけこの曲に関してはちょっとすごい仕組みを発明してしまったと本気でおもっているのでナイショにさせてください。
 使用した機材はRoland RD700NX、Roland JUNO-G、KORG X50、KORG PS60、KORG microSAMPLER、KORG DS10、KORG M01などです。今作中一番制作に時間がかかった曲です。

5.starless(Tabula Rasa)
 Moonが完成してアルバムのテーマが「天体」と決まったときに、曲名だけ思い付いたものがいくつかありました。この曲はそのなかのひとつです。星や月が全く見えない暗い暗い空をイメージした曲です。副題のタブラ・ラサは「白紙状態」だとか「空白の心」といった意味を持つ言葉です。
 そのイメージを表現すべく、傘木亮介(key)に鳴らす音に条件を与えた上で全編でピアノを演奏してもらいました。同じコンセプトで演奏しても白石と傘木とでは音の選び方や間の取り方が全く異なり、出来上がったときの空気感も変わるのでおもしろいですね。普段ならピアノと言えばまず白石が演奏するのですが、今回はそういったジブンにないものが出てくることを期待して傘木に演奏してもらいました。
 ピアノと時折打ち鳴らされるチャイム以外の音はすべて小林真也(ds)が操るChaos Shinya Padのしわざです。コルグのカオスパットとiPadの2台を繋げてなんかしてました。こいつが傘木のピアノ以外にもそのへんでテキトウに録音した環境音なんかを素材に不可思議な音を出しています。
 すこし話は逸れますが、今回のアルバムにおいてとても重要な要素として扱っているのが「不確定性」と「チャンスオペレーション」およびそれらをひっくるめて言う「偶然性」です。全編で白石が作曲を行いましたが、実際には「制作指揮」とか「現場監督」といったほうが適切かもしれません。プレイヤー其々の「今」が切り取られたアルバムという気がしてならないのです。仮令同じ条件でいまもう一度録音をしたとして、絶対に同じものには仕上がりません。#SCOPEはそういうアルバムなのです。

6.MACS0647-JD(the Ark)
 白石ソロ曲。MACS0647-JDは観測史上最も遠くにあるかもしれない銀河団の名前です。抑々銀河なのかも分からないくらい遠くにある星、もしくは星たちとされているのである・・・。要するになんだかよくわかんないんです。なんだかよくわかんないのでジブンでもなんかわかんないかんじでとりあえず色々音を重ねてみたかんじです。
 なんちゃって、ほんとうは、ひとつ、根源を成す大きな仕掛けのある曲です。んんん?ナンジャロウ。副題やクレジットをヒントに、気付いてもらえたらものすごくうれしいです。
(2019年7月23日追記・・・以前nameshop用に書き下ろしたインスト曲「BOX」のピアノパートを逆再生して引き延ばしたものをベースに普段なかなか使う機会のない楽器の音を素材にしたものたちをコラージュのように重ねて制作しました。副題のArkとは箱のことですね。遠い宇宙のどこかがジブンの知っている世界と繋がっていたら面白いんじゃないか、なんてことを渡部かをりと話しているうちに思い付いた手法です。)

7.Polaris(the MO)
 ポラリスとは北極星のことです。ただそこにあって動かない星。それはなんだか母のようでもあり・・・。
 動かずにじっとしている様子をピアノのワンコードの繰り返しで表現しました。あらぶるギターはポラリスを囲む星たちのおしゃべりです。
 ポラリスが動かないというのはあくまでも地球上から見た場合のみの話です。starlessの「星が見えない暗い空」も同様で、どちらも我々が住む地球上のどこかが舞台になっています。この曲はなんとなく「冬の夜の空の下」のようなイメージにしたかったので、すこし寒々しく、だけどいっしょにいてくれるひとがいるので心強くて暖かい。そんなサウンドを目指しました。
 余談ですが、あらぶるギターはもともとあらぶるシンセでした。ところが内田明宏(gt)が「ギターでやってもおもしろい気がする(おれに弾かせろ)」みたいなことを言ってくれたので、すぐに弾いてもらったんです。いいテイクでした。試しにシンセとギターを同時に鳴らしてみると、所々で掛け合いになっていたりフレーズが引き継がれていたりという偶然が起こっていておもしろかったで、あわや採用か!?というところまで盛り上がったのですが、まぁ、もともとのコンセプトとずれてしまうので、それはそれでまた今度やろうということで、ギターだけ残して完成としました。 僕にとっては、内田明宏とのデュオというずっとやりたかった編成がようやく叶った思い出深い曲になりました。

8.Hyperion(Endeaver)
 渡部かをり(bs)が小説"SCOPE"を書きはじめたころに、僕が「こんな星があるよ」と紹介した星のひとつに、この「ハイペリオン」がありました。そしてその紹介をヒントに小説の内容に変化を与えたり、または小説の内容から音楽が作られたり。そんなふうに、アルバム"#SCOPE"と小説"SCOPE"は、お互いに影響を与え合って制作されました。
 ハイペリオンは土星の衛星で、球体ではない上に自転軸と自転周期がぐちゃぐちゃに変化するそうです。もし身近にそんな物体があったら、目にする度に全く違う見え方がするだろうなぁとおもったものです。おもったものです、という言い方をするのには理由がありまして、これはメンバーにもナイショにしてたのですが、実は作曲をはじめてすぐのころにハイペリオンを題材にピアノ曲を作ったことがありまして、その曲は長調と短調がころころ入れ替わる仕組みを用いて見え方が変わる様を表現したので、今回はどうしようかと考えたわけです。そこで思い付いたのが、短3度ずつ転調して4つの調性を行ったり来たりするというものでした。これならふわふわしながらも絶えず変化する感じが出せそうだし、アンビエントとしてちゃんと無視できる音の範囲内だろうとおもいました。ちなみにこの和声はジョン・コルトレーンの長3度ずつ転調して3つの調性を行き来する仕組みを参考にしています。コルトレーンよりキーがひとつ多い!勝った!なんて一瞬だけおもいましたが、このコード進行で即興で演奏するとなるとこれだけゆったりしたテンポでもなかなか大変で、傘木亮介(key)と渡部かをりと3人でヒーヒー言いながら収録しました。もっと実力をつけてこれくらい寝ながらでも出来るようになりてぇな!という願いを込めて、エンデバー(努力)という副題を付けました。
 ということで3人が演奏してるわけですが、冷静に聴いてみるとかをりさんのベースは殆どルートしか弾いてないし、傘木のピアノはコードの変わり目は必ず休んでいますね?白石だけいっしょうけんめいコードを縫うように演奏してるのがわかりますね?1年後くらいにはメンバー全員これくらいできるようになろうね!エンデバー!(こういうときドラマーはどういう気持ちで話を聞いているんでしょうか?)

9.Sun(Remainning)
 今作唯一のスタジオ一発録りの曲です。Moonが完成してすぐ、Starlessとこの曲、Sunの曲名だけが決まりました。案外、アルバムのコンセプトと曲名がしっかり決まれば、曲の中身を頭のなかではっきり鳴らせたりするもんです。この曲でやりたいこと、表現したいことはあっという間に決まりました。副題は「記憶するもの」です。これはnameshop最初期の楽曲「忘れゆくもの」の対になる名前ですし、内容にも関わりがあるようにしています。これはおそらく、アルバム中最も等身大のnameshopである曲でしょう。その想いから、クレジットには敢えてnameshop其侭の表記をしました。
(2019年7月23日追記・・・完売してしまったCDには曲ごとの演奏参加者と使用機材が列挙された手書きのクレジットが同封されていました。この曲のクレジットのみ使用機材ではなく担当パートを表記した、という意味でしょう。)

10.Scope
 アルバムのタイトルの候補に"SCOPE"と出たとき、すぐに僕の頭のなかにはこの曲の方法論が浮かびました。そしてこの曲のデモを提示したことでアルバムタイトルが"#SCOPE"と決定しました。nameshopの楽曲のうちアンビエントとして作られたものには全て"#"を付けていたので、全曲アンビエントの今作にはアルバムタイトルに"#"を付けました。
 「天体の奏でる音楽」というのがこの曲のコンセプトです。天体のカオス(混沌)とコスモス(調和)を、ポリリズムを用いて表現しました。冒頭からベース・ギター・エレピ・ピアノが、其々5音・7音・9音・11音の音列を各々のテンポで演奏します。この状態がカオスです。後にボーカルに導かれるように加わるドラムによって徐々に一定の律動が提示され、すべての楽器が徐々にドラムのテンポに肖ります。このときはじめて調和が齎されます。ドラムを導くボーカルは神様かなんかでしょうか。軈てドラムのビートが崩れると、しばらくは一定の律動が保たれますが、ふたたび各々のテンポに戻ってしまい、天体は最期を迎えます。辿り着く先は「無」ということで、このアルバムはここでおしまいです。が、リピート再生でアルバムの1曲目に戻ると同主調の平行調になりスムーズに繋がり気持ちがいいです。お試しを。

by narushop | 2019-07-23 07:23 | 日々のこと | Comments(0)

アルバムリリースそしてサブスク配信開始

こんにちは白石です。

5月1日にソロアルバムを4枚配信リリースしました。
「音の日記帳 第一巻」
「音の日記帳 第二巻」
「My Tyl,Mytyl」
「music for EBICAN vol.1」
の4枚です。
すべてこちらのサイト(note)でデータ販売を行っています。
アルバムの収録曲など詳しいことはディスコグラフィのページをご覧ください。

そしてこれら4枚のアルバムのうち「音の日記帳第一巻」と「音の日記帳第二巻」がApple Music、Google Play Music、Spotify、LINE MUSIC、YouTube Musicなど各種サブスクリプションサービスでの配信が開始されました。
(ヨーワカランって人はとりえあずYouTubeで「白石なる」って検索してみてください。聴けます。)

なんだか便利な世の中になったもんで、作った曲をかんたんに世界中のひとが聴ける状態にすることができるんですね。
今回出した曲たちのほかにも、どこかで1回使われたきりの曲や依頼を受けて作ったもののどこにも出されなかった曲、抑々誰に聴かせるつもりもなく作った曲なんかがまだまだいっぱいあるので、日々作っている曲たちと併せてまた何らかの形でお届けしたいとおもいます。
よろしければお付き合いいただけたらとおもいます。
令和もよろしくね。


by narushop | 2019-06-24 04:26 | 日々のこと | Comments(0)

世の中金じゃない

プロにタダ働きをさせて「世の中金じゃない」と言うひとがいた。
ふざけるな。
それはお金を受け取ったひとが言う台詞だ。

「世の中金じゃない」という言葉は、
「お金は大事だが、それが全てではない」という意味で発せられるべきだ。



"空白の3ヶ月"をきっかけに、多くの作編曲家や演奏家といった同業者、舞台の制作や技術といった裏方の方々から面白い話を聞くことができた。
私の"それ"も、やはり業界的には「あるある」なエピソードだったのだろう。
しかしこういった事例がいつまでも起こり得る業界であってはならないとおもう。
未来の若手に「そんな時代もあったらしいよ」と笑われるくらいのものにしていくべきだとおもう。
変化し続けなければならないとおもう。

by narushop | 2018-12-12 21:21 | 日々のこと | Comments(0)

空白の3ヶ月

大学4年のときから音楽を作ってお金をもらう、いわゆる作曲家という仕事をしている。
気が付けばその仕事をはじめてから7年が過ぎていた。
そしてこの秋、これまでの作曲家人生でぶっちぎり大優勝の、
辛くて、屈辱的で、腹が立って仕方がないようなことが起きた。
誰が見るかもわからないブログだが、まぁ実例として、
間違っていないと信じている所感を交えながら、
だらだらと、ここに書き残しておこうとおもう。



8月ごろ。
以前作曲家として関わった劇団の演出家から仕事の依頼が来ました。
歌曲含む10曲程度の劇伴の制作、
2か月半の稽古での歌の指導と曲の更新、
20人規模のバンド編成での生演奏のための編曲と譜面作成、
演奏家のブッキングと機材の確保、
プロモーション映像の出演と音源制作、
1週間の集中稽古での演奏と現場指揮、
1週間10本の本番での演奏、
本番とは別で宣伝用のライブ4本に出演。
・・・といったようなことをこちらの見積の10分の1くらいの予算でやってくれとのことでした。
できるわけがありません。
いや、できるんだけど、引き受けてはいけません。
僕ひとりが低予算で仕事をするならまだしも(やだけど)、
ちゃんと演奏家を呼んで仕事をしてもらうとなるとそうはいきません。
ということで、バンドの規模を大幅に縮小すること、
演奏家には適切な出演料を支払うこと、
僕の曲は売り切りで現場での指導や更新には関与しないことを条件に、
依頼を受けることにしました。

9月。
稽古が始まる前から演出家からいくつか曲の発注を受けます。
ダンスシーンの曲、登場人物がラップをする曲、ヴァイオリンの曲・・・。
すべてデモ音源を制作してチェックしてもらいます。
並行して、ジブンからも、いただいた資料や作品のイメージから、
数曲ラフを書いて録って送ります。

10月。
オーディションを経て役者が決まり、台本が出来上がりました。
台本を見てビックリ、必要な曲数が増えている。
さらに、20人弱のキャストが全員で歌う長尺のメインテーマもある。
そして、予め送っていた曲が使われるシーンがない。
・・・まぁまぁ、ものを作るひとならそんなことは珍しくはありません。
作っているうちに、思考や作っているものそのものが変化していくものです。
同じものづくりをする人間として、
そこに文句は言うべきではないとおもいました。
それに、僕はその台本を読んで面白いとおもった。
以前関わったときにも、ここで作られるものは面白いと確信していた。
僕には、リスペクトがあった。

稽古がはじまりました。
たとえ殆ど稼ぎにならなくても、舞台のための面白い曲を作りたい。
歌ってくれる役者には、スターになったつもりで歌ってほしい。
そうおもって、仕事の合間に少しずつメインテーマを書き進めました。
ある程度進んだところでデモを作って演出家に送り、
OKが出たところで現場に持ち込み役者に歌ってもらいました。
稽古後もメロディを口遊んでくれるひとや、
「なるさんの曲が歌えて幸せ」と個人的に伝えてくれるひともいました。
が、演出家からは少しも褒めてもらえませんでした。
それどころか。
「もっとアップテンポで楽しいかんじにしてほしい」
「きれいな曲はきれいだなって思うだけで印象に残らない」
そんなことを言われ悔しい思いをしました。
が、これだって同じことです。
デモを聴いた印象は悪くなかったが実際に鳴らしたら違った。
もっと舞台を面白くできる方法がある。
つくるひととは、そういう生き物なのである。
そうだろう?おれよ。

てなわけで、めげずに0から作り直した白石選手。
今回はすごいぞ、ゴージャスなスウィングワルツがメインだぞ。
これもできてすぐに聴いてもらいました。
演出家は、良くなった、という前置きの上で、言う。
「もっと無骨っぽいというか」
「凝ってないかんじ」
「簡単にできるかんじが欲しい」

心がくじけた。
悔しいとか、ショックとか、悲しいとか、そんなんじゃなくて。
これは、怒りだ。
僕の表現を否定して、ジブンさえ納得できればいいものになるまで直させて、
現場で鳴らしては直させて、そんなことを2ヶ月先まで、
ノーギャラ同然で、やらせようとしているのである。
誰でもよかったのである。
そこにリスペクトは、ない。

僕はこれまでの不満を、予算のことから現場での態度のことまで、
全て演出家本人にメールで伝えた。
しかし返事は1週間待っても来なかった。
今後の歌の稽古の予定を伺うメールすら、返信はなかった。
返信を待っている間、ほかの関係者から現場の話を聞かせてもらった。
演出家が僕のことをボロクソに言っているそうだった。
「いちいち制作費を要求するのはプライドが高すぎる」
「役者のみんなはノーネームでやってくれてるのに」
「いい曲の1曲も書いてこないくせに」
「これ以上文句を言ってくるなら座組から降りてもらおうと思ってる」
言いたい放題だった。
言われたことひとつひとつに反論したくてたまらなかったが、
ひとまず演出家に「関係者に愚痴ってないで僕に直接伝えてください。じゃなきゃ僕があなたに直接文句を伝えた意味がありません。」という内容のメールを送った。
返事は来なかった。

返事が来ないまま10日が過ぎた。
「今日中に返事くれないなら辞退するぞ」というメールを送ろうと考えたのだが、
「白石から稽古の予定を伺うメールが来てなかったか」と演出家に直接聞いてくれた関係者が聞いた返答は、
「歌を進めるモチベーションにないから意図的に返信をしていない」というものだった。

すぐに「10日間返信をいただけなかったので口頭契約の解除意思ありと見なし今回の任の全てを辞退いたします」というメールをした。
返信はすぐにやってきた。
「文面だけだと誠意が伝わらないと思うので夜に電話します」とのことだった。
午前0時を過ぎても連絡がなかった。
夜中の3時ごろになって「忙しくて遅くなってしまったので」とメールが来た。
「あくまでお客様第一という感覚を持ちえないことには関わるのは難しい」とのことだった。
言いたいことはいっぱいあったが、これ以上何を伝えてもジブンが傷付くだけだろうとおもい、それ以上は何もしなかった。
ほんとうに、傷付いた。
傷付いている。

まぁ振り返ってみれば色々おかしかったよね、
曲作らせておいて使ってくれないどころか、
前もって送ってた曲だって感想のひとつもくれなかったし、
演奏家を使うのに1ステージごとにギャラを発生させると言ったら驚いていたり、
知り合いのプロのPAを3回くらいタダ働きさせちゃった~とか言ってたり、
まぁね、身内だけでものをつくるならそういうやり方でもいいとおもうんだよ。
外部の人間(それもプロ)を巻き込んでそれが当然みたいにするのってマジで業界にとって害悪だとおもうんす。
(ついでに言うと「タダでもいいからやりたい」とかいうやつも害悪だ。)
しかし多分相手方からすりゃおれのようないちいちお金の話をするようなやつのほうが害悪なのだろう。
お金を発生させないと責任を負わないなんて、
ものづくりに対して不誠実なのだろう。

この空白の3ヶ月の間にこのプロジェクトに関わるつもりで作った曲はそこそこの量になった。
しかしそれらすべては舞台のために依頼を受けて書いたのに、ギャラももらえず日の目も見ずにまるでなかったことのように死んでいくのである。
将来もしかしたら何らかの形でこれらの曲が拾われて活かされて生かされるときが来るのかもしれないが、仮令そうだったとして、僕はこの一連の出来事を振り返って「良かった」なんて絶対におもいたくないのである。

by narushop | 2018-11-11 20:18 | 日々のこと | Comments(0)

さいきんのはなし

久しぶりの投稿です。
前回の更新6月とか半年以上前なんですね。
そりゃあそこそこ色々あるってもんです。

ざっくりこんなかんじだった
・7年間所属した横濱J&Bオーケストラを脱退したよ
・nameshopのワンマンライブがあったよ
・NARUTRIOも何回かワンマンライブをやったよ
・オワリズム弁慶もアルバム出したり関西行ったりつい先日ツアーファイナルがあっておもしろかったりしたよ
・27年暮らした横浜県を出たよ、大田区民になったよ
・引越し記念に好きなクラシック曲を弾いて録音してサウンドクラウドにあげたよ
カワサキアリスという劇団の芝居の音楽を担当しました、1時間の芝居に1時間の曲をつけるという挑戦的なものでした
・海老名市文化会館で開催される「主催公演ポスター展」に楽曲提供しました、開催期間は3月16日(金~4月8日(日)です
・海老名市文化会館で開催される「Mr.ドットマン ドットアートの世界展」の音楽を担当します、Mr.ドットマンこと小野浩はかつてナムコに在籍しており、かの有名な「ギャラガ」「ギャラクシアン」「ゼビウス」「マッピー」「ディグダグ」などのゲームのドット絵を打ち込むデザイナーとして活躍した方で、僕もリアルタイムではなかったもののファミコン実機を引っ張り出して遊んでいたゲームたちですから、まさか今になってそれを作っていたひとといっしょに仕事ができるとはなぁと感慨に耽っておるわけなのですが、私はここですこし変わった1曲を作りまして、これがなんと曲が1周するのに単純計算で丸一日以上かかるというね、

そんなかんじでこれまでと変わらず、変わり続ける日々を過ごしています。
今年もよろしくね。(雑)

by narushop | 2018-02-11 11:20 | 日々のこと | Comments(0)

5月6月の2か月間でトリオのワンマンライブが5本もありました。
ちょうど1年くらい前にトリオを結成して、ワンシーズンに1回くらいのペースでライブができたらいいね~なんて話していたのですが、ほんとうにありがたいことにこの2ヶ月だけでたくさん演奏する機会をいただけて、かけがえのない時間を過ごすことができたようにおもいます。

まず5月5日、白楽BLUESETTEでのワンマンライブ。
4回目のブルースエットでのライブ。子供の日ということで「子供」をテーマにセットリストを組んで、なんだかいつもよりのびのびと、かつ挑戦的な演奏ができたとおもいます。
あとあれですね、新曲「道」の初演でした。トリオをやるようになって、はじめて感じたことがあります。それは「ジブンによって作られた音楽なのに、その音楽によってジブンが作られていく」ということ。その感覚を突詰めたくて作ったのが「道」という曲なんです。いままで歩んできた道ではなく、これからできる道。それは未知。しらないジブンに出会う道。ジブンに挑む曲。たぶん、このトリオでやってきたから生まれた曲なんだとおもいます。

続いて5月31日、川崎のチッタデッラの噴水広場でのワンマンライブ。
過去に2度、トリオとは違う編成、違うメンバーで出演したことがあるライブだったのですが、トリオでの出演は初めてでした。
前2回ではまだまだ力不足だと感じていましたが今回は違いました。通用する、届く、という実感が得られました。まるで見たことのない、はじめて出会うひとたちが我々の演奏を偶然耳にして、立ち止まってくれて、歓声をあげてくれた。
たしかな手応えがありました。しかし同時にまだまだやれる、もっとできる。そんなことをおもいました。

そして6月3日、矢部駅前のソラ珈琲&食堂ヒュッテでの昼夜2本のライブ。
昼のライブではスタンダードを演奏したことで通りがかったひとたちがお店に入ってきてくれました。予定にないアンコールをいただき、多くいらっしゃった古い曲が好きだというお客様方のために美空ひばりの「真赤な太陽」を演奏しました。
夜のライブでは我々と同世代くらいのお客様が多く集まってくださり、それに合わせて予定していたセットリストを変更して演奏しました。ここでも予定外のアンコールをいただき武満徹の「小さな空」をさらりと演奏しました。
どちらのライブでも終演後に多くの方が声を掛けてくださって、ここでも密かに「よっしゃあ!」と拳を握ったものでした。

最後に6月10日の平沼集会所でのワンマンライブ。
当初予定していた座席がすぐに予約で埋まってしまって、急遽増やした予約席、それでもいっぱいのお客様!その殆どが50歳以上のお客様で、90代だという方まで!
ここでは前半にジャズのスタンダードや歌謡曲のカバーを、休憩を挟んで後半はオリジナルのナンバーをトークを交えて演奏したのですが、この日ほど客席からの熱を感じた舞台はなかったようにおもいます。アンコールの演奏を終え暖かい拍手のなか3人で並んでお辞儀をして、顔を上げたときに客席いっぱいの笑顔が見えて、僕は涙が出そうになりました。忘れられない光景だった。

おもえば、これらすべてのライブで舞台から見えた景色は、たぶん僕ひとりだったら見ることができなかったものだったろうなと。
ジブンと同じような目線で音楽と向き合って楽しんで演奏をしてくれる真也くんとかをりさんに出会えたことは、僕にとってほんとうに仕合わせなことだったのだろうとおもいます。
しかしこれは紛れもなくジブンで掴んだ仕合わせであると僕はおもいます。それでも僕は、僕に出会ってくれたふたりにはとびきり感謝しています。

それから、これら5本のライブには、ひとつの例外もなく、僕たちと出会ってくれて、僕たちをより多くのひとたちに伝えるべく力を尽くしてくれたひとたちがいました。
白楽BLUESETTEのマスターは毎度必ず金曜日の夜というプレミアムな時間を狙って僕たちを呼んでくださっています。
チッタデッラでは長年お世話になっているイベンターの真野くんが僕たちを呼んで会場をセッティングしてくれました。
ソラ珈琲&食堂ヒュッテではnameshopで活動を共にしてきた絵描きのちょびちゃんが自らの職場でNARUTRIOがライブをしたら面白そうと考えてイベントを企画してくれて(ちゃっかりライブペイントとの共演も果たしました)、店長のせいじさんが張り切って会場をセッティングしてくださいました(店内のドアを取っ払って内装を整えて食卓を大移動!おまけに写真もバシバシ撮ってくださいました)。
そして平沼集会所の館長である後藤さんは、去年の年末に出演したフェスイベントで偶然僕たちの演奏を見ていて、ライブ後すぐに僕たちの所へやってきて是非うちで演奏してくれとオファーをくださり、約半年かけて我々出演者とお客様方双方のために隅々まで行き渡った準備をしてくださいました。
彼らにも最上級の感謝を伝えたいとおもいます。

僕は、音楽は心から生まれて心へ届くべきものだとおもっています。人ありきなんですよ。例えば僕は「楽しくなければ音楽ではない」という考えも同時に持っていますが、これだって心です。この心のもと、(良くも悪くも)人の心を動かす、(内容はどうあれ)何かを考えさせる演奏をしないことには無駄なんです。尤もそれが全くの無駄であるともおもっていないし、実際のところ、その無駄を積み重ねてきて現在があるのだとおもっているのだけれど。けれども、いまはもうそんなフィールドは矩踰えているのだから、届く演奏をしなきゃいけないんです、伝わるものを作らなきゃいけないんです。
たぶん、そうしてできた仲間たちがいま僕のまわりにいてくれていて、いっしょに演奏をしてくれたり、観客と繋げるために脳みそを使ってくれたりしているのだろうな。

なぁんてことを考えました。

ひとりきりではじめた音楽も10年続けていたら、いつの間にか面白いひとたちに囲まれていた。
間違いなく、いままで生きてきたなかでいまがいちばんなのだ。
いつだって「頑張ろう」なんてことはおもっていないです。
やりたいようにやるだけです。
それを続けることができるうちは、「もっともっと」とおもっていたいですね。
しらないジブンに出会う道は屹度もっと長く続くのだろうから。

by narushop | 2017-06-22 06:22 | 日々のこと | Comments(0)

NARUTRIO3回目のワンマンライブでした

昨晩は白楽BLUESETTEでNARUTRIO3回目のワンマンライブでした。
ご来場くださったみなさま、ほんとうにありがとうございました。

セットリストはこんなかんじ↓

1.Between Transparency And Sedicim
2.Take Five(Paul Desmond)
3.Blues Ette(Toots Thielemans)
4.One Note Samba(Antonio Carlos Jobim)
5.ルンピニートラップ
6.平凡な人生
--------------------------
7.Margarita!(上原ひろみ)
8.Softli,As a Morning Sunrise(Sigmund Romberg)
9.小さな空(武満徹)
10.アンダーカレント
11.Piano solo
12.祝電の音楽 第2楽章~第3楽章

次回は5月5日金曜日、俗にいう子供の日に同じく白楽BLUESETTEで開催予定です。
それ以降にもいくつか出演が予定されているライブがあります。去年より元気です。

そういえば今回からはじめて開演前と休憩中に自作の環境音楽を店内で流すということをやってみました。
使った曲は以下の通り。
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1.revolving laterne
2.deepBlue#2
3.解の公式
4.MACS0647-JD
5.Earth
6.那須の昼
7.水の神殿
8.いのちの記憶(music by Shogo Sakai)
9.AMB-000100001-00000000-0011001
10.Polaris
11.乱反射ガール
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バーで環境音楽が流れるなんてMOTHER2のストイッククラブ(石を眺めながら哲学や量子論などを語り合う大人の社交場)みたいだな~なんて考えながら聞いていました。
これは次回以降も継続していきたいですし、ぜひ体験してもらいたいですね。

といった具合で今回はおしまいです。また次回!

by narushop | 2017-01-28 08:21 | 日々のこと | Comments(1)

ビジネス三箇日

新年明けましたが明けただけでとりわけ大騒ぎして入れ替えるような気持ちがあるわけでもなければ1年を振り返ることもないし新年の抱負とか語ってないで変わらず気負わずテキトウにやっていこうとおもいました、とか言おうとおもいましたが、こうして新年に合わせてジブンの活動をまとめたホームページ(まがい)を作ってしまった以上平静を装ってはいられなくなってしまいました。
まぁ、気負わず頑張っていきたいですね!
ここ5年間ほどサークルやバンドなどに所属し組織の一員として仕事や楽しみを得ていたのですが、そろそろ私個人でジブンの名前と責任を背負った活動をしていこうという企みがありまして(もちろんしばらくはすべての所属を離れようというつもりもないのですが)、今年から数年かけてその準備をしていこうとおもっているところです。
より人と関わっていく年になっていくのでしょう。楽しみです。

年を跨いでトリオ用にとても挑戦的な曲を書きました。
近頃、ジャズなど即興を含む音楽を演奏していて「技術が発想に負けている」ということを感じています。思い付いたことを思い付いたままに演奏できないのが歯痒いという気持ちです。尤も、そこを思う儘に出来ていると感じている演奏家なんて世の中にはあまりいないのでしょうけれども。つまりそれは伸びしろであると僕はおもうのです。やりたいことがある以上成長は止まないものなのだと。
・・・ということで、今の技術では演奏するのがやや困難な曲に仕上げました。どんどんジブンに挑んでいきたいです。

「日々のこと」記念すべき第1回はここまで。次は1月27日に開催されるトリオのワンマンライブが終わったころにでも更新できたらとおもいます。

by narushop | 2017-01-02 08:16 | 日々のこと | Comments(0)